- 緑内障
緑内障の手術はどんなときに必要?手術の種類と、術後の見え方・通院を眼科医が解説
「目薬を使っているのに、手術をすすめられました」「緑内障の手術は怖くないですか」というご相談をいただくことがあります。
先に結論をお伝えします。緑内障の手術は、目薬やレーザーで眼圧が十分に下がらないときや、視野の悪化が続くときに検討する治療です。最近は目への負担が小さい手術も増え、日帰りで受けられるものもあります。
ただし、手術は失われた視野を取り戻すものではなく、これ以上の進行をゆるやかにするためのものです。この記事では、手術を検討するタイミング、手術の種類、術後に気をつけたいことを説明します。
緑内障の治療は「眼圧を下げる」ことが基本
緑内障は、目から脳へ情報を送る視神経が少しずつ傷み、見える範囲(視野)が狭くなっていく病気です。現在、進行を抑える方法として確立しているのは、眼圧を下げることです。もともと眼圧が正常範囲の方も同じです。
眼圧を下げる方法は、大きく3つあります。
- 目薬(点眼治療):治療の中心です
- レーザー治療(SLT):外来で、房水の出口の流れを良くします
- 手術:房水の流れ道を広げたり、新しく作ったりします
目薬が合わないときのレーザー治療については、緑内障のレーザー治療(SLT)とは?で詳しく紹介しています。
手術を検討するのはどんなとき?
手術は「目薬の次の段階」と思われがちですが、実際には目の状態や生活に合わせて判断します。主に次のような場合に検討します。

- 目薬を何種類も使っても、目標とする眼圧まで下がらない
- 眼圧は下がっているように見えても、視野検査で悪化が続いている
- 目薬の副作用やアレルギーで、続けることが難しい
- 白内障手術を受ける予定があり、同時に眼圧も下げておきたい
目標とする眼圧は、視野の残り具合や年齢、もう片方の目の状態などから一人ひとり決めます。そのため、同じ眼圧の数値でも、手術をすすめる方とすすめない方がいます。
手術の種類① 目への負担が小さい手術(MIGS)
MIGS(ミグス、低侵襲緑内障手術)は、小さな切り口から目の内側で行う手術の総称です。白目を大きく切らずに済むため、手術時間が短く、回復も比較的早いのが特徴です。

代表的なものに、次のような方法があります。
- 小さな器具を房水の出口に入れる手術(iStent inject W):白内障手術と同時に、ごく小さな器具を2つ、房水の出口に埋め込み、房水の流れを助けます
- 線維柱帯切開術(眼内法):目詰まりした出口を、目の内側から切り開きます
MIGSは、初期から中期の緑内障の方や、白内障手術に合わせて目薬を減らしたい方などで検討します。一方で、眼圧を下げる力は後で説明する手術ほど強くないため、進行した緑内障ではほかの方法を選ぶことがあります。術後しばらく、目の中の少量の出血で見えにくくなることもあります。
手術の種類② 房水の新しい通り道を作る手術
眼圧をしっかり下げる必要があるときは、房水を目の外へ逃がす「新しい通り道」を作る手術を検討します。
- 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー):白目の一部に小さな窓を作り、白目の表面の膜の下に水のたまり(ブレブ)を作ります
- 細い管を使うインプラント手術(プリザーフロ マイクロシャント):細い管で房水の通り道を作る方法で、線維柱帯切除術より手術時間を短くできることがあります
- プレートつきのインプラント手術:何度か手術をしても眼圧が下がらない難しい緑内障などで検討します
これらの手術は眼圧を下げる力が強い一方で、目への負担も大きくなります。術後に眼圧が下がりすぎたり、ブレブから細菌が入ったりすることがあるため、手術と同じくらい術後の管理が大切です。
手術で期待できること・できないこと
手術を受ける前に、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
- 手術は眼圧を下げて、視野の悪化をゆるやかにすることが目的です
- すでに欠けてしまった視野や、下がった視力が回復するわけではありません
- 手術の後も、目薬が必要になることがあります
- 効果の続き方には個人差があり、数年後に追加の治療が必要になることもあります
「手術をしたのに見え方が良くならない」と感じる方もいますが、手術がうまくいっていても見え方は大きく変わらないのが一般的です。だからこそ、視野が保たれているうちに治療を検討することが大切です。時期を逃すと、選べる手術も限られてしまいます。
手術の後の通院と生活
緑内障の手術は、術後の通院がとても重要です。特に新しい通り道を作る手術では、術後しばらくは診察の間隔が短く、眼圧を見ながら調整を行います。

術後の生活では、次のことに気をつけてください。
- 処方された目薬は指示どおりにさす(手術した目の目薬が変わることがあります)
- 目をこすらない、強く押さえない
- 洗顔・入浴・運動などの再開時期は、医師の指示に従う
- 目の痛み、急な見えにくさ、目やにや充血が強くなったときは、すぐに連絡する
定期的な通院が難しい場合は、手術の種類を選ぶときの大切な判断材料になります。遠方にお住まいの方やお仕事の都合がある方は、事前にご相談ください。
まとめ|手術は「今の見え方を守る」ための選択肢
緑内障の手術は、目薬やレーザーで眼圧が十分に下がらないときや、視野の悪化が続くときに検討する治療です。目への負担が小さいMIGSから、眼圧を下げる力が強い手術まで種類があり、緑内障のタイプや進み具合、白内障手術の予定、通院のしやすさなどを合わせて選びます。
手術は失われた視野を元に戻すものではありませんが、今ある見え方をできるだけ長く保つための大切な選択肢です。手術をすすめられて迷っているときは、ご自身の目の状態と、手術で期待できること・リスクを主治医とよく話し合ってみてください。
かなざわ土屋眼科では、緑内障の手術を日帰りで行っています。治療の方法については、緑内障治療のページもご覧ください。
> ※この記事は一般的な情報提供を目的としています。手術の適否や方法、術後の経過は、個々の目の状態によって異なります。必ず主治医の指示を優先してください。
記事監修者について
土屋俊輔
かなざわ土屋眼科院長の土屋俊輔(つちやしゅんすけ)です。金沢大学附属病院に在籍中は、大学病院へご紹介頂く白内障・緑内障・網膜硝子体疾患の中でも難治性疾患、および緊急疾患にお困りの方々に数多くの手術を執刀させて頂き、研鑽を積んで参りました。 当院では手術だけではなく、近視進行抑制治療や、一般的な眼科疾患にも広く対応しています。どんな眼のお困りごとも、気軽にご相談ください。
