- 緑内障
眼圧が正常なのに緑内障?日本人に多い正常眼圧緑内障を眼科医が解説
健康診断や人間ドックのあとに眼科を受診された方から、「眼圧は正常だと言われたのに、どうして緑内障なんですか」というご質問をよくいただきます。とても自然な疑問だと思います。
先に結論からお伝えします。眼圧が正常の範囲におさまっていても、緑内障は起こります。しかも日本では、そのタイプが緑内障全体の多数を占めることが知られています。
これを正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)と呼びます。
この記事では、なぜ眼圧が正常でも緑内障になるのか、どうやって見つけるのか、そして治療では何をするのかを順番に説明します。
そもそも緑内障とはどんな病気か
緑内障は、目から脳へ映像を送る「視神経」が少しずつ傷んでいき、見える範囲(視野)が欠けていく病気です。傷んだ視神経はもとに戻らないため、早く見つけて進行をゆるやかにすることが治療の目的になります。
かつては「眼圧が高くなって視神経が押されて傷む病気」と説明されてきました。眼圧とは、目の中の圧力のことです。この説明自体は間違いではないのですが、これだけでは説明のつかないタイプがあることが分かってきました。
日本人に多い「正常眼圧緑内障」
眼圧の正常範囲は、おおよそ10〜21mmHgとされています。正常眼圧緑内障は、この範囲におさまっているにもかかわらず、視神経が傷んで視野が欠けていくタイプの緑内障です。
日本で行われた大規模な疫学調査では、40歳以上の緑内障のうち、実に多くが正常眼圧緑内障であることが報告されています。つまり、日本では「眼圧が高くない緑内障」のほうがむしろ一般的なのです。
健診で眼圧だけを測って「異常なし」と言われても、それだけでは緑内障がないとは言い切れません。ここが誤解されやすいところです。
なぜ眼圧が正常なのに視神経が傷むのか
はっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が重なっていると考えられています。
- その人の視神経が、もともと圧力に弱い体質である
- 視神経を養う血液の流れが不足しがちである
- 低血圧や冷え、睡眠時無呼吸などの全身の状態が関係している
- 近視が強く、視神経の構造的に負担がかかりやすい
大切なのは、「正常」というのはあくまで多くの人を集めたときの平均的な範囲だという点です。同じ15mmHgでも、平気な方もいれば、その人の視神経にとっては負担になっている場合もあります。眼圧の数字そのものより、その人の視神経が耐えられているかどうかが問題になります。
自覚症状が出にくいのが最大の落とし穴
正常眼圧緑内障は、痛みや充血といった分かりやすい症状がほとんど出ません。視野が欠けはじめても、両目で見ていると反対の目が欠けた部分を補ってしまうため、本人はなかなか気づけないのです。
「見えにくくなった」と感じて受診されたときには、すでにかなり進行していることも少なくありません。だからこそ、症状ではなく検査で見つける必要があります。
なお、視野検査ではまだ異常が出ていないものの、視神経に緑内障を思わせる変化がある段階を前視野緑内障と呼びます。
詳しくは前視野緑内障とは?視野検査が正常でも「緑内障の一歩手前」と言われる理由をご覧ください。
どうやって見つけるのか
眼圧測定だけでは不十分で、次のような検査を組み合わせて診断します。
- 眼底検査:視神経の入り口(視神経乳頭)の形やへこみ具合を見ます
- OCT(光干渉断層計):視神経の周りの神経線維の厚みを測ります。目に触れずに数分で終わります
- 視野検査:どの範囲がどれくらい見えているかを詳しく調べます
健診で「視神経乳頭陥凹拡大」「緑内障の疑い」と指摘された場合は、症状がなくても一度眼科で詳しい検査を受けてください。
金沢市にお住まいの方は、市の緑内障検診も入り口として利用できます(金沢市の緑内障検診とは?)。
治療は「今の眼圧をさらに下げる」
正常眼圧緑内障であっても、現在のところ確立している治療は眼圧を下げることです。もともと正常範囲であっても、そこからさらに下げることで進行をゆるやかにできることが、複数の研究で示されています。
治療の中心は点眼薬です。1日1回の目薬から始めることが多く、効果が足りなければ種類を追加したり、レーザー治療や手術を検討したりします。治療の効果や進み方には個人差があり、すべての方で進行が止まるわけではありません。
点眼は続けてこそ意味があります。さし忘れが気になる方は、緑内障の目薬、さし忘れたらどうする?もあわせてお読みください。
日常生活で心がけたいこと
生活習慣だけで緑内障を治すことはできませんが、視神経の負担を減らすうえで意識しておきたい点はあります。
喫煙は血流によくありませんし、睡眠不足や強いストレスも避けたいところです。うつ伏せで長時間過ごしたり、きつすぎるネクタイや襟で首を締めつけたりすると眼圧が上がることがあります。また、急に自己判断で血圧の薬を調整すると夜間の血圧が下がりすぎ、視神経への血流に影響することがありますので、必ず内科の主治医とご相談ください。
そして何より大切なのは、決められた間隔で通院を続けることです。緑内障は数年単位でゆっくり進みます。半年に一度の検査が、次の10年の見え方を左右します。
まとめ|眼圧が正常でも、安心とは限りません
- 眼圧が正常範囲でも緑内障は起こり、日本ではそのタイプが多数を占めます
- 眼圧の数字より、その人の視神経が耐えられているかどうかが問題です
- 自覚症状はほとんど出ないため、眼底検査・OCT・視野検査で見つけます
- 治療は点眼を中心に眼圧を下げ、通院を続けることが進行対策になります
健診で眼圧が正常だったから大丈夫、と考えずに、40歳を過ぎたら一度は眼底までしっかり診てもらってください。当院でもOCTや視野検査による緑内障の検査を行っていますので、気になる方はご相談ください。
※この記事は一般的な情報提供を想定した内容です。症状や治療方針には個人差があります。診断や治療については、必ず主治医の指示を優先してください。
記事監修者について
土屋俊輔
かなざわ土屋眼科院長の土屋俊輔(つちやしゅんすけ)です。金沢大学附属病院に在籍中は、大学病院へご紹介頂く白内障・緑内障・網膜硝子体疾患の中でも難治性疾患、および緊急疾患にお困りの方々に数多くの手術を執刀させて頂き、研鑽を積んで参りました。 当院では手術だけではなく、近視進行抑制治療や、一般的な眼科疾患にも広く対応しています。どんな眼のお困りごとも、気軽にご相談ください。