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狭隅角・浅前房とは?見えているのに白内障手術を勧められる理由と注意点
「よく見えているのに、白内障手術を勧められた」「狭隅角(きょうぐうかく)と言われたけれど、どういう意味?」——外来でよくいただくご質問です。
結論から言うと、狭隅角・浅前房(せんぜんぼう)は、目の中の水の出口が狭くなっている状態です。水の流れが滞ると眼圧が上がり、緑内障や「急性緑内障発作」につながることがあります。白内障手術で分厚い水晶体を薄い眼内レンズに替えると、目の中のスペースが広がって水の出口が開くため、見え方に困っていなくても手術をお勧めすることがあります。
当院のYouTubeチャンネルでも、狭隅角・浅前房と白内障手術の関係を、図を使って動画で解説しています。
この記事では、動画の内容に沿って、隅角・前房とはどこなのか、なぜ白内障手術なのか、目薬で様子を見られないのか、日常生活で気をつけることは何か、を順に説明します。
狭隅角・浅前房とは?
目の一番表側にある透明な膜が「角膜(黒目の表面)」、その奥にあるレンズが、白内障手術の対象になる「水晶体」です。角膜と、茶目(虹彩)・水晶体との間にある、水で満たされたスペースを「前房(ぜんぼう)」と呼びます。
前房の端、角膜と虹彩が出会う角度のついた隅の部分が「隅角(ぐうかく)」です。
- 浅前房:前房というスペースが浅い(狭い)状態
- 狭隅角:隅角の角度が狭い状態
厳密には別の言葉ですが、前房が浅い目では隅角も狭くなっていることが多く、診察の場ではほぼ同じような意味で使われます。「目の前のほうのスペース、またはその隅が狭くなっている状態」と考えていただければ十分です。
なぜ隅角が狭いと問題になるのか
目の中では「房水(ぼうすい)」という水が絶えず作られ、流れています。この水の量のバランスで、目の硬さ=眼圧が決まります。そして房水の主な出口が、隅角にある線維柱帯(せんいちゅうたい)・シュレム管という排水路です。
隅角が狭いと、細い道を水が通らなければならず、流れが悪くなりやすくなります。すると、
- 目の中に水がたまりやすくなる
- 眼圧が上がる
- 目の神経(視神経)の付け根に負担がかかり、緑内障につながる
という流れが起こりえます。さらに程度が強い場合、出口が急にふさがって眼圧が一気に上がる「急性緑内障発作」を起こすことがあります。目の強い痛み・頭痛・吐き気・充血・かすみ、電灯のまわりに虹のような輪が見える、といった症状が出たときは、夜間や休日でもできるだけ早く眼科を受診してください。
一方で、狭隅角は決して珍しいものではありません。言われたからといって「とてもまれで怖い病気だ」と思う必要はありませんが、気づかないうちに緑内障が進むこともあるため、注意しながら経過を見る必要がある状態です。
どんな人が手術の対象になる?
狭隅角・浅前房の方全員が手術を受けなければならないわけではありません。検査(隅角の観察や画像検査、眼圧、視神経の状態など)を組み合わせて判断します。治療をお勧めすることが多いのは、例えば次のような方です。
- すでに眼圧が上がってきている方:隅角が明らかに狭く、水の流れが悪くなって眼圧が上がっている場合
- 眼圧はまだ正常でも、発作の危険性が高いと判断される方:隅角が非常に狭く、狭い状態を解除しておく必要がある場合
- すでに緑内障の変化が出始めている方
緑内障の心配なのに、なぜ「白内障手術」なの?
「隅角」「緑内障」という言葉が出てきたのに、治療は「白内障手術をしましょう」と言われるため、戸惑われる方が多いと思います。
白内障手術は、単純化すると少し分厚い水晶体を取り除き、薄い人工のレンズ(眼内レンズ)を目の中に入れる手術です。水晶体は年齢とともに厚みを増し、前房を押し狭める原因にもなります。これが薄い眼内レンズに置き換わると、前房が深くなり、隅角も大きく開きます。
その結果、水の通り道が広がり、眼圧が上がりやすい状態や緑内障発作の危険性を大きく下げることが期待できます。つまり、今ある緑内障、あるいは将来緑内障になりやすい目を守るために、白内障手術を行うということです。
レーザー治療という選択肢
隅角を広げる治療には、白内障手術のほかにレーザー虹彩切開術があります。茶目(虹彩)にレーザーで小さな穴をあけ、房水の別の逃げ道を作る治療で、外来で行えるため以前は広く行われていました。
ただ、特に日本人では、レーザー治療から年月がたってから角膜(黒目)が濁り、角膜移植などの治療が必要になることがある点が問題になっています。日本緑内障学会のガイドラインや海外の研究でも、条件が合えば白内障手術(水晶体を取り除く手術)のほうが利点が大きいという報告があります。
当院では、白内障が少しでもあるようであれば、安全性と今後の発作の予防を考えて、白内障手術をお勧めすることが多くなっています。ただし、年齢が非常に若い方や全身の状態によっては、レーザー治療をお勧めする場合もあります。
手術を受けるタイミングは?
手術をお勧めするタイミングは、専門家の間でも意見が分かれるところで、最終的には主治医と相談して決めることになります。
白内障がすでに出てきている方であれば、手術によって見え方が改善することと、緑内障発作の心配を減らせることの、二つの利点があります。
一方で、白内障がほとんどなく、見え方に困っていない段階で手術をお勧めすることもあります。「見えているのに、なぜ今なのか」は分かりにくいところですので、ご自身の目の状態と、手術で何を防ごうとしているのかを十分に納得したうえで受けていただくことが大切です。白内障手術一般のタイミングの考え方は「白内障手術いつ受ける?視力だけでは判断できない!」でも解説しています。
目薬で様子を見ることはできないの?
手術に抵抗がある方から「目薬でどうにかなりませんか」と聞かれることがあります。
緑内障の目薬にはたくさんの種類があり、水の出口の通りを良くしたり、水の量を減らしたりして眼圧を下げます。ただし、目薬で隅角そのものを広げることはできません。もともとの水の通り道が非常に狭いと、目薬だけでは追いつかないほど水がたまり、重い状態になることがあります。
そのため、狭隅角・浅前房の場合は、まず根本的に水の通り道を開いてあげることが一番の治療と考えられています。隅角が狭くない緑内障であれば目薬による治療が基本ですが、狭隅角の場合は手術をお勧めすることが多い、と考えてください。
狭隅角になりやすい人は?
狭隅角は、生活習慣で起こるものではありません。多くは生まれつきの目の形によるものです。
- 目の大きさが小さめの方:近視が強いほど目は大きい傾向があり、逆にもともと目が良い方(遠視の方)は目が小さめで、中の構造がぎゅっと詰まっているため、前房が浅くなりやすい傾向があります
- 年齢を重ねた方:水晶体が少しずつ厚くなり、前房を狭くしていきます
- 水晶体の位置がずれている方:けがなど何らかの理由で水晶体が前に移動し、前房が狭くなっている場合があります
ただし、全員に当てはまるわけではなく、「近視だから絶対に狭隅角にはならない」とも言えません。ご自身で見分けることは難しいため、眼科での検査が大切です。
狭隅角と言われたら気をつけること|お薬と確認カード
狭隅角の方は、程度によっては使用を控えたほうがよいお薬があります。瞳を広げる作用のあるお薬(抗コリン作用のあるお薬など)で、胃腸の薬、かぜ薬、抗不安薬・抗うつ薬、頻尿の薬などの一部に含まれ、添付文書に「緑内障の方は注意」などと書かれているものがあります。
どのお薬が該当するかをご自身で判断するのは難しいため、当院では日本眼科医会が作成したお薬手帳に挟める連絡カードをお渡ししています。控えたほうがよいものに丸を付け、当院の名前を書いてお渡しします。
- カードはお薬手帳に挟んでおく
- 他の医療機関の受診時や、薬局でお薬を受け取る際に見せる
- 市販薬を買うときも、薬剤師に狭隅角であることを伝える
なお、すでに処方されているお薬を自己判断で中止・変更することはしないでください。気になるお薬があれば、処方した医師・薬剤師、または眼科にご相談ください。緑内障の生活上の注意点は「緑内障で『してはいけないこと』は?」もあわせてご覧ください。

まとめ|「見えているから様子を見る」が一番の落とし穴
- 狭隅角・浅前房は、目の中の水の出口が狭い状態。眼圧が上がり、緑内障や緑内障発作につながることがある
- 白内障手術で水晶体を薄い眼内レンズに替えると、隅角が広がり、発作の危険性を大きく下げることが期待できる
- 目薬では隅角を広げられないため、狭隅角では手術をお勧めすることが多い
- 手術の要否・時期は、検査結果をもとに主治医と相談して決める
- 控えたほうがよいお薬があるため、連絡カードをお薬手帳に挟んでおく
狭隅角の方は珍しくなく、言われたこと自体を怖がる必要はありません。ただ、「見えているから、ちょっと様子を見よう」としているうちに、緑内障が進んだり発作を起こしたりすることがあります。治療を提案されたら、目の状態と手術の目的をよく理解したうえで、主治医と一緒に考えていきましょう。手術当日の流れや麻酔については「白内障手術は痛い?怖い?」で解説しています。
当院でも、狭隅角・浅前房と言われた方のご相談をお受けしています。
※この記事は一般的な狭隅角・浅前房の方を想定した内容です。治療の方針は検査結果や目の状態によって異なりますので、必ず主治医の指示を優先してください。
記事監修者について
土屋俊輔
かなざわ土屋眼科院長の土屋俊輔(つちやしゅんすけ)です。金沢大学附属病院に在籍中は、大学病院へご紹介頂く白内障・緑内障・網膜硝子体疾患の中でも難治性疾患、および緊急疾患にお困りの方々に数多くの手術を執刀させて頂き、研鑽を積んで参りました。 当院では手術だけではなく、近視進行抑制治療や、一般的な眼科疾患にも広く対応しています。どんな眼のお困りごとも、気軽にご相談ください。


