- 緑内障
緑内障で「してはいけないこと」は?生活の注意点と、本当に避けたい落とし穴
緑内障と診断されたあと、患者さんからいちばん多くいただく質問があります。
「先生、これから何をしてはいけないのでしょうか?」
運動を控えたほうがいいのか、下を向く家事はだめなのか、コーヒーはやめたほうがいいのか……と、生活のこまごまとしたことを心配される方が多くいらっしゃいます。
先に結論をお伝えします。緑内障で本当に避けたいのは、日常生活の細かな動作ではなく「自己判断で治療をやめてしまうこと」です。 生活の制限は、みなさんが思っているよりずっと少なくて大丈夫です。
この記事では、緑内障で本当に気をつけたいことを、優先順位の高い順に整理してお伝えします。
目次
してはいけないこと①|目薬を自己判断でやめる・減らす
緑内障の治療の柱は、眼圧を下げて視神経が傷むスピードをゆるやかにすることです。現在の医学では、一度欠けてしまった視野を元に戻す方法はありません。だからこそ、これ以上進ませないための点眼を続けることが何より大切になります。
ところが緑内障は、初期から中期にかけて自覚症状がほとんどないため、
- 見え方が変わらないので、効いている実感がない
- 忙しくてさし忘れる日が続き、そのままやめてしまった
- 目薬がなくなったが、受診の時間が取れずに放置している
といった理由で、いつのまにか治療が途切れてしまう方がいらっしゃいます。
自覚症状がないことは、治っている証拠ではありません。「変わりがないこと」こそ、治療がうまくいっているサインです。 続け方に悩んでいる方は、緑内障の目薬、さし忘れたらどうする?続けるコツと正しい点眼方法もあわせてご覧ください。
しみる・充血する・まぶたが黒ずむなど、点眼が続けにくい理由があるときは、我慢せずご相談ください。別の系統の目薬に変える、回数を調整するなど、続けられる形にする方法があります。やめるかどうかを一人で決めないことが、いちばんの注意点です。
してはいけないこと②|「見えているから大丈夫」と受診を先延ばしにする
緑内障の診療では、眼圧・眼底(視神経の形)・視野・OCT(神経の厚みの検査)を組み合わせて変化を追いかけます。進行しているかどうかは、時間をかけて比べて初めて分かることで、1回の検査だけでは判断できません。
通院が途切れると、この「比べるための記録」が抜けてしまい、数年後に再開しても、その間に進んだのかどうかが分からなくなります。自覚症状が出てから受診される方の多くは、すでに視野がかなり欠けている段階です。まだ症状のない今こそ、決められた間隔での受診を続けてください。
してはいけないこと③|市販薬を自己判断で使う(隅角が狭い方は特に注意)
これは意外に知られていない注意点です。
目の中の水(房水)の出口である「隅角(ぐうかく)」がもともと狭いタイプの方は、一部の市販薬や処方薬で隅角がふさがり、急激に眼圧が上がることがあります。かぜ薬・鼻炎薬・酔い止め・一部の胃腸薬や睡眠改善薬などに含まれる、抗コリン作用のある成分が代表的です。
薬の説明書に「緑内障の方は使用しないでください」と書かれているのは、主にこのタイプを想定したものです。すべての緑内障が対象ではありませんが、自分がどのタイプかを知らないまま自己判断で使うのは避けてください。
市販薬を買う前に「隅角が狭いと言われたことがあるか」を診察で確認しておくと安心です。隅角については狭隅角・浅前房についてでも解説しています。
してはいけないこと④|眼圧が上がりやすい姿勢・動作を長く続ける
生活動作の中には、一時的に眼圧を上げるものがあります。神経質になる必要はありませんが、習慣になっているなら少し見直す価値があります。
- 長時間のうつむき・逆立ちのような頭を下げる姿勢(草むしり、寝ながらのスマホなど)
- 息をこらえて力むこと(重い物を持ち上げる、便秘でいきむ)
- 首まわりを強く締めつけること(きついネクタイや襟)
- 目を強くこすること
いずれも「絶対にしてはいけない」ものではなく、同じ姿勢を続けない、途中で休憩を入れるという程度の工夫で十分です。
実は制限しなくてよいこと
心配されがちですが、通常は控える必要のないものも挙げておきます。
- ウォーキングなどの適度な運動:むしろ望ましいと考えられています
- 読書・パソコン・スマホ:目を使うこと自体が緑内障を進めるわけではありません
- コーヒーや飲酒:常識的な量なら問題ありません
- 旅行・温泉・飛行機:特別な制限はありません
「あれもこれもだめ」と生活を狭めてしまうことのほうが、長い通院にはマイナスに働きます。気になる趣味や仕事があれば、遠慮なく診察でお尋ねください。
例外|急に目が痛い・かすむときは、すぐ受診を
ふだんの緑内障は急ぎませんが、ひとつだけ例外があります。急に目が強く痛む、頭痛や吐き気をともなう、目が充血して急にかすむ——このようなときは、隅角が急にふさがって眼圧が急上昇している可能性があります。放置すると短期間で視力に影響が出ることがあるため、様子を見ずに眼科を受診してください。
早期に見つけることが、いちばんの対策
してはいけないことを心配する以上に効果的なのは、早い段階で見つけて治療を始めることです。金沢市では40歳以上の方を対象とした検診があります。詳しくは金沢市の緑内障検診とは?受診券が届いたら受けてほしい理由をご覧ください。
まとめ|守るべきは生活の細かなルールより「治療を続けること」
- 本当に避けたいのは、自己判断での点眼中断と通院の中断
- 自覚症状がないのは治った証拠ではなく、治療が続けられているサイン
- 隅角が狭いタイプの方は、市販薬を使う前に確認を
- うつむき姿勢や力む動作は、長く続けない程度の工夫で十分
- 運動・読書・コーヒー・旅行などは、通常制限の必要はない
- 急な目の痛みやかすみは例外。すぐに受診を
当院では検査結果を一緒にご覧いただきながら、生活で気になることにもお答えしています。「これはしてもいいのだろうか」と迷うことがあれば、受診の際にお話しください。
※この記事は一般的な緑内障の経過を想定した内容です。病型や進行の程度によって注意点は異なります。必ず主治医の指示を優先してください。
記事監修者について
土屋俊輔
かなざわ土屋眼科院長の土屋俊輔(つちやしゅんすけ)です。金沢大学附属病院に在籍中は、大学病院へご紹介頂く白内障・緑内障・網膜硝子体疾患の中でも難治性疾患、および緊急疾患にお困りの方々に数多くの手術を執刀させて頂き、研鑽を積んで参りました。 当院では手術だけではなく、近視進行抑制治療や、一般的な眼科疾患にも広く対応しています。どんな眼のお困りごとも、気軽にご相談ください。