- 網膜硝子体
黄斑上膜 いつ手術する?
こんにちは、かなざわ土屋眼科の土屋俊輔です。
開業し半年以上が経過し、徐々に当院で硝子体手術を受けて頂く方も多くなってきました。
そこで、硝子体手術の中では比較的多い、黄斑上膜という疾患に関して今回取り上げてみたいと思います。
このコラムでは
- 黄斑上膜とはどのような病気か
- いつ手術を受けるべきか(様子を見ててもよいのか?)
- どんな手術になるのか
をお伝えしたいと思います。
黄斑上膜とはどのような病気でしょうか?
黄斑上膜という病気は、そもそもいろいろな呼び方が存在します。
たとえば他には網膜前膜、黄斑前膜、網膜上膜という呼び方がありますが、これらはどれも同じ疾患を表しています。
光を感じ取る網膜の一部である黄斑という場所の中央を黄斑といいますが、その部分の上(前)に本来ないはずの膜が生じる疾患を、黄斑上膜(網膜前膜、黄斑前膜、網膜上膜)とよんでいます。
この黄斑上膜は40歳以上の20人に1人に発症する(程度の差はありますが)と言われ、
網膜疾患の中では最も多い疾患の一つになります。
今このコラムをお読みの方も、通院している眼科でこの疾患と診断され、辿り着いているのかもしれません。
診断はされたけれども、視力は良いし経過を見ましょうと言われた方もいれば、手術をしましょう、と言われた方もいると思います。
それではどのような場合に手術を考えるとよいのでしょうか?
いつ手術を受けるべきか(様子を見ててもよいのか?)
黄斑上膜の主な症状は歪視(わいし:線が歪んで見える症状)と大視症(ものの大きさが左右の眼で違ってみえる)があります。
この症状を検査でチェックして、手術適応を決めることが多いです。
当院では、Mチャートと呼ばれる歪視を測定する検査と、アニセイコニアテスト(New Aniseikonia Test: NAT)と呼ばれる不等像視(ものの大きさの左右差)の検査を行って、上記の症状を測定します。
それぞれの検査で手術をおすすめする大まかな目安はありますが、もちろん本人の自覚症状と合わせて総合的に判断します。
ただし、自覚症状として気にならないとしても、進行してから手術となると症状が改善しにくいですので、上記検査で目安以上の測定値がでているようであれば手術をおすすめしています。とくに大視症は手術では改善しにくいため、これ以上進行すると生活に支障をきたす可能性があると御本人がおっしゃる場合は早めの手術をおすすめしています。
この2種類の検査を行っていない眼科もありますので、視力がでているから様子をみましょうと言われた場合でも、一度チェックすることをおすすめします。
どんな手術をするのか?
では、手術となった場合、どのような手術をするのでしょうか?
硝子体手術では、白目(強膜)の部分に3−4箇所の眼内にアクセスできるようなポートを作成し、眼内の硝子体をきれいに過不足なく除去します。その後、非常に細いピンセットのような鑷子で黄斑上膜を剥離・除去します。
単純に剥離するだけでは再発のおそれもありますので、必要に応じて、黄斑上膜のさらに下にある内境界膜とよばれるおよそ5µmの透明な膜を除去して終了します。
また場合によっては白内障手術も同時に行いますが、これは個人の状況によってことなりますので、手術が決まった際にお伝えしています。
当院における硝子体手術では、眼に優しい手術を目指すべく、眼内の傷口を最小の27ゲージ(0.4mm)にして行っております。
以前に比べて飛躍的に硝子体手術が発展し、日帰りで手術を行えることができるようになって、患者さんにとっても便利になってきています。
注意事項としては、歪みの症状はすぐには改善しません。術後半年〜一年程度で徐々に改善していきますが、術後ある程度期間が経っても完全に歪みもゼロにはなりません。さらに上記にも述べたように、大視症はあまり改善しにくいです。
手術を受けるタイミングは非常に重要ですので、主治医、かかりつけの先生とも手術をすべきかどうか、よく相談してくださいね。
黄斑上膜と診断され、手術を迷っている方、最近歪みがあるように感じる方は一度当院を受診頂いて、検査を受けていただいてもいいかもしれません。
皆様のお越しをお待ちしております。
かなざわ土屋眼科 院長 土屋俊輔